実店舗レベルのオーダーメイド販売はWebフォームでは限界

オーダーメイドスーツを実店舗販売する場合、細かな仕立と寸法について注文者と長時間やりとりをします。販売者と注文者双方にとって手間と時間のかかる工程ですが、高品質な商品を提供するためには必要です。手間を敬遠する消費者もいますが、その突き詰める工程自体を商品価値として評価する注文者がコアなターゲットとなります。

ECの普及に伴い、自社の高品質な商品を近隣の商圏以外にも拡販する場合は、オーダーメイドの販売方法として「Webフォーム」が1つ候補に上がります。無料システムも含め比較的低コストで、設置先を選ばずに導入できるメリットがあります。しかしWebフォームでは、従来実店舗で実施していた対面接客でのオーダーメイド販売に匹敵する品質の購入体験を実現することには限界があります。今回はその課題と、考えられる解決策のアイディアを紹介します。

課題1：複雑な仕様ロジックを表現しにくい
課題2：仕上がりが可視化されない
課題3：項目や選択肢の意味が分かりにくい
課題4：問い合わせ対応が煩雑
課題5：返品クレームのリスクが残る

課題1：複雑な仕様ロジックを表現しにくい

オーダーメイド商品において、一部の選択肢が他の部分に影響を与えることはよくあります。「AがBだったらCはDになる」というような、部位ごとに連動するロジックを表現するためには、一般的なWebフォームでは限界があります。

解決策1：

一つの解決策は専用のWebシステムをプログラミング開発することです。これにより、一連のオプションとその結果を指定するための特別なロジックを組み込むことができます。この方法には、追加の開発時間と費用が必要となりますが、高度にカスタマイズされたオーダーメイド商品を注文者に提供するための価値があります。

課題2：仕上がりが可視化されない

Webフォームで項目ごとに選択肢を決定していけば商品仕様が完成しますが、それはあくまで文字情報に過ぎません。そのとおりに制作された商品が見た目としてどのようなものになるかは、注文者の想像に任せるしかありません。

解決策2：

商品の視覚化は、オーダーメイド商品の購入体験を向上させる重要な手段です。可能であれば、Webフォームにリアルタイムの視覚的なフィードバックを組み込むことを検討してみてください。選択されたオプションに基づいて商品の画像が動的に変化することで、注文者は彼らの選択が実際にどのように商品に影響するかを理解するのに役立ちます。これは、注文者が商品に対してより深い理解を持つのに役立ち、また返品や交換のリスクを減らすのにも有用です。

課題3：項目や選択肢の意味が分かりにくい

Webフォームは基本的に文字で表現されます。プルダウンやラジオボタンで文字からその項目を決定していきますが、その項目が商品全体でどの部分なのか、各選択肢の見た目や機能性はどういったものなのか、注文者にとっては分かりにくい専門用語ばかりです。

解決策3：

項目と選択肢の説明を改善することで、この問題は解決できます。可能な限り専門用語を避け、より一般的で理解しやすい言葉を使用してください。また、それぞれの選択肢が具体的に何を意味し、どのように最終的な商品に影響を与えるかを説明する詳細な情報を提供することを検討してください。

課題4：問い合わせ対応が煩雑

対面販売での接客コストを減らせた反面、知識の不足した注文者からは商品仕様に関する質問が様々に寄せられます。その手段はメール・電話・FAXなど様々で、それらの一元管理ができないと情報が錯綜してしまいます。

解決策4：

この問題の解決策は、問い合わせ管理の一元化と、WebフォームにFAQセクションを設けることです。問い合わせが一元化されると、スタッフが迅速に対応でき、情報が散逸するリスクが減少します。FAQセクションでは、注文者が最も頻繁に問い合わせる質問に対する回答を提供し、その結果として問い合わせの数自体を減らすことが可能です。

課題5：返品クレームのリスクが残る

以上の課題が生じる結果として、注文者が最初にイメージしていた商品と納品された商品とに、致命的なギャップが生じてしまうことがあります。その場合、クレームや返品や修正などのリスク・コストが生じてしまいます。

解決策5：

事前に明確な期待を設定し、注文者が商品の完成品を正確に理解できるようにすることで、このリスクを軽減できます。商品の視覚化（解決策2）や選択肢の説明の改善（解決策3）はここでも役立ちます。また、注文確定前に注文者に全ての選択肢を再確認させ、返品ポリシーを明確に伝えることも重要です。

これらの課題と解決策を適切に理解し、適用することで、実店舗レベルのオーダーメイド販売をWeb上でも実現することが可能となります。それぞれの解決策には時間と費用が必要かもしれませんが、それらは高品質な商品を提供し、顧客満足度を高めるための投資と捉えることが重要です。