BtoBの自社ECサイト立ち上げに必要なこと

企業やブランドが商品・サービスを販売するBtoCビジネスでは、一般消費者に対し、いつでも手軽に買い物ができるECサイトの活用が大いに進んでいます。近年は企業間取引であるBtoBでも、ECサイトの利活用が進んでおり、多くの成功事例を生んでいます。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査結果」によると、2013年には約11兆円規模であったBtoCのEC市場が、2020年には19兆円を超えるまでに成長しています。

同調査で発表された、商取引金額全体に対する電子商取引市場規模割合を示すEC化率はBtoB ECが33.5%となり、前年より1.8%増加、2016年から5.2%増加とBtoBのオンライン化が進展していることが分かりました。

市場規模においても2019年が約353兆円、2020年で約335兆円規模と、コロナ禍で一時的低下は見られるものの、非常に大きなマーケット市場となっています。
今回はビジネス成長を支える自社BtoB ECサイトの立ち上げで知っておきたい基礎知識や実際の構築方法について解説します。

BtoBの自社ECサイト立ち上げに必要なこと

自社ECサイトとモール型の違い

自社ECとは、自社で独自のドメインを取得し、自ら運営するECサイトを意味しています。複数の店舗が集まって1つの大きなショップを形成しているECサイトをモール型のECサイトと呼びます。Amazonや楽天市場などが代表的なECモールです。

モール型の場合、運営元の元からある仕組みを利用できるため、手軽にオンライン取引を開始できますが、自社ブランディングが困難であることや、顧客情報がモール運営側の所有物となってしまうといったデメリットがあります。

自社ECの立ち上げには、一昔前まではゼロからシステムを構築するために高い技術力や資金力が必要とされ、限られた企業しか利用できない状況がありました。昨今ではサポートサービスも充実しており、そのハードルは低くなっています。

自社ECサイト構築の方法

自社ECサイトの構築方法には、代表的なものとして5つのスタイルが挙げられます。

オープンソース

オープンソースとは、オンライン上で無償公開されているソフトウェアをベースとして使い、自社向けにカスタマイズして構築する方法です。

基本的な機能はすでにプラットフォームとして設計されているため、すぐに構築することができ、比較的安価に自社ECサイトを運用していくことができます。プラグインでの機能追加やカスタマイズが自由に行えます。

ただし、オープンソースを使用したECサイト構築には専門知識が必要となります。また、セキュリティ対策が必要な事に加えて、トラブル時にサポートが受けられないため、社内での対応もしくは保守の依頼を行う必要があります。

ASP

ASPとは、Application Service Providerの略で、インターネットを経由して、ソフトウェアやその稼働環境を提供するサービスや提供事業者のことを意味します。ASPを利用すると、提供側の専用サーバーにアクセスし、格納されたソフトウェア機能を利用する形式で、自社ECサイトを簡単に立ち上げることができます。

オープンソースほどの自由度はありませんが、近年はカスタマイズ性の高いサービスも増えており、基本機能に必要な仕組みを取捨選択して搭載し、自社ビジネスに合ったECサイトを構えることが可能となっています。

システム更新などは提供プロバイダーに任せられるため、自社でのアップデート作業が不要となり、手間なく比較的安価に最新機能を用いて運用できるメリットがあります。

クラウドEC

クラウドECは、運営事業者がECサイトに必要な機能をクラウド上で保有し、各企業が利用できるようサービスとして提供するものです。

クラウドECでは、カスタマイズしにくいASPとは異なり、基本のシステムプラットフォームにカスタマイズを施すことが可能です。外部システムとの連携を行って、自社ECとして構築する流れになります。ゼロから構築する場合に比べて、開発に必要な技術的リソースや費用を最小限に抑えられます。

ASP以上に独自のカスタマイズを施しやすいため、柔軟な構築が可能となり、プラットフォームそのものは事業者(ベンダー)が管理するので、最新のシステムと機能を安心して利用できます。ASPと後述するパッケージとの両方の良い点を最適化したところがクラウドEC最大の特徴と言えます。

フルスクラッチ

フルスクラッチとは、まっさらのゼロ状態からECサイトを設計・構築していく方法です。既存のシステムやソフトウェア、事業者によるサービスなどを利用せずに自社ビジネスに最適なECサイトを思い通りに立ち上げられる点が最大の魅力です。

専門的な技術やノウハウ、まとまった開発作業時間とコストが必要となる他、サーバーやセキュリティ対策、更新作業、機能追加など開発やその後の運用においても、莫大な費用と手間がかかることを覚悟する必要があります。

パッケージEC

パッケージECでは、ECサイト構築向けに作成された専用のソフトウェアパッケージを販売会社から購入して作ります。基本機能はすでに搭載済みで、追加機能も搭載しやすい仕様で設計されているため、フルスクラッチほど技術やコストが要求されることはありません。

自由度の高いカスタマイズで構築でき、初期投資のみで済む点は、パッケージの良さと言えます。自社ビジネスに親和性の高い特徴をもつパッケージや、同系統の業種での導入事例があるものを選ぶことで、よりスムーズに構築できます。

一方で、運用開始後は自社でメンテナンス・更新作業を行っていく必要があり、クラウドやASPのように事業者側のサポートを頼ることができません。追加コストが発生する可能性や、保守性の低下に注意する必要があります。

BtoB EC導入のメリット

ECサイトを活用することで多数の企業との取引を行いやすくなります。営業業務量が削減でき、遠方などの企業などより多くの取引先に新たなアプローチができます。また、人材不足や対面営業が行えない場合でも、顧客獲得や商品・サービスの提案を続けられます。

取引がシステム化されてDX化が進むことで、売上状況など個々の顧客情報とともにリアルタイムで把握して管理が可能です。さらに分析することで、マーケティング施策の最適化など、売上や利益率の向上が図れるでしょう。

また、ECサイトの導入により社内の業務効率化が可能です。受注がシステム化されることで、担当者が行っていた仕様調整や受注業務を削減できます。顧客企業側でも、オンライン上にて商品情報や受発注履歴、在庫情報など事前に情報を整理して確認しやすくなるため、効率良く取引を行えます。

BtoB ECの構築種類

先の項では、ECサイトの構築方法から導入するメリットなどを解説しましたが、ここからは構築したサイトを2つに分類して解説していきます。

クローズド型

一つ目の「クローズド型」と呼ばれるBtoB ECサイトは、特定の取引先顧客などのみに限って公開できるECサイトです。

一般公開していないため、Google検索などでヒットすることはありません。取引相手として認めた顧客企業を限定会員として招待する形式で、そのBtoB ECサイトにアクセスできるURLやログインID、パスワードを伝えて、閲覧・利用してもらいます。

普段から頻繁に取引をしている得意先企業が主な対象となり、受発注業務の手間を削減することや、営業業務を効率化してフォローアップを充実させることなどがサイトの狙いになります。

対象となる顧客企業により、販売価格や提案商材を変えて最適なマーケティングを行っていくことも可能で、決済は与信管理を伴うことも実施しながら、既存取引の掛け率を踏襲するケースが一般的となっています。

スモール型

二つ目の「スモール型」と呼ばれるBtoB ECサイトは、オンライン上に一般公開されるタイプのサイトです。国内だけでなく世界中の企業や団体が対象となる可能性を秘めており、新規顧客の開拓や取りこぼしている潜在顧客の獲得が主な目的になります。

また、営業支援(SFA)や顧客管理(CRM)を導入すれば、より戦略的なECサイト運用ができるでしょう。

まとめ

BtoB ECサイトは、現代のビジネスに欠かせないものとして普及しています。新規顧客の開拓や既存顧客との関係強化、自社の業務効率化などに有効となり、基本的な知識さえ身につければ、自社ビジネスに合ったBtoB ECサイトを構築することができるでしょう。

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